レイ|絞る条件を、提供する活動から考える
Harvard Business Schoolの戦略解説は、提供する価値を支える活動の選択や、何をしないか、活動同士のつながりを論点にしています。この見方からは、対象を絞ることにも、仕事の仕方に関わる理由が必要だと考えられます。ただし、狭い市場ほど成果が出るという規則を示しているわけではありません。本稿では、限定する条件が実際の提供につながっているかを点検する補助線にします。
架空のデザイン事業が、短い商品案内の制作を中心にするなら、聞き取りの進め方や確認する資料をそろえやすいかもしれません。限られた時間で対応できる範囲も見えやすくなります。一方、説明を整えるために長い調査が必要な仕事まで同じ条件で引き受ければ、提供が難しくなる可能性があります。対象の名前を狭くするより、どの活動を続けて行えるかから、サービスの範囲を考えます。
何をしないかは、顧客を低く評価する言葉にする必要はありません。依頼の目的や必要な専門性が合わないなら、対応できる部分と難しい部分を具体的に伝えます。相手の価値観や能力を決めつけず、提供内容との適合を見ることが重要です。狭さを演出するために不要な条件を加えるのではなく、顧客の判断と自分の責任の両方に役立つ境界を示すと、専門性を誇張せずに説明できます。
また、活動を絞ることで効率がよくなっても、それだけで十分な需要があるとは分かりません。必要とする場面があるか、見つけてもらえるか、費用や時間が条件に合うかは別に確かめます。戦略の考え方を、自店の売上予測として使わないようにします。レイは、価値を出す活動と、顧客にとっての用事、続けられる運用を並べて考えます。その三つがつながる条件を、絞り込みの理由として説明できるかを見ます。
レイ|属性より、価値が必要になる場面を見る
Christensen InstituteのJobs to Be Doneの解説は、人や組織が特定の状況で進めようとしていることへ目を向けます。属性だけでは、同じ人がいつ何を必要とするかを十分に説明できない場合があります。本稿では、すべての属性が不要だという主張ではなく、対象を説明するときに、困りごとや使う場面も具体化するための視点として参照します。個別の需要を証明するものではありません。
例えば、同じ小規模事業者でも、新商品を出す時期、既存客へ案内を変える時期、問い合わせが減って説明を見直す時期では、求める支援が違うかもしれません。架空のデザイン事業が得意とするのは、そのうちどの場面でしょうか。「事業者向け」という広い説明だけでも、「開業二年以内」という年数だけでも分からないことがあります。何を進めたいときに、どんな支援を使うのかを確認すると、境界を別の軸で見直せます。
比較される相手も、同業の専門店に限られません。自分で説明を書き直す、今あるテンプレートを使う、しばらく何も変えない、といった選択肢もあり得ます。対象を細かく書いても、それらより依頼する意味が分からなければ、選ぶ判断は進まないかもしれません。競合の肩書きとの違いだけでなく、本人が他にどう進めようとしていたかを、必要な範囲で確かめることが材料になります。
用事を聞く際も、相手の内面をすべて理解したつもりにならないようにします。話してくれたこと、こちらが観察したこと、推測したことを分けます。複数の事情が重なって選ぶこともあるため、理由を一つへ押し込む必要はありません。レイがこの考え方から借りたいのは、人を固定した市場の箱へ入れる方法ではありません。価値が必要になる場面を具体化し、不要な制限と必要な条件を見分ける視点です。
レイ|差別化の境界を「競合と違う点」と「顧客が選ぶ基準」に切り分ける
「狭い説明」と「選びやすい説明」は、分けて考えられます。条件がたくさん書かれていても、自分が何を相談できるか分からなければ、読む人は判断しにくいでしょう。反対に、対象の属性が広くても、役立つ場面と提供範囲が明確なら、検討できる場合があります。比べるのは、条件の数や言葉の鋭さだけではありません。必要とする人が、自分の場合に使えるかを確かめられるかという点です。
架空のデザイン事業では、紹介文を読んだ人に、どんな場面で誰が使うサービスに見えたかを聞く方法が考えられます。答えを先に説明してしまうと、文章そのものの伝わり方が分かりにくくなります。まず読んだ範囲の理解を聞き、次に不明点を確かめます。「良いと思いますか」という感想だけより、依頼できる内容や条件をどう受け取ったかを見る方が、説明の境界を点検しやすくなります。
ただし、説明が分かりやすくなったことと、購入に値すると感じられたことは別です。必要な用事があっても、予算やタイミングが合わないかもしれません。ここで、すぐに価格を下げたり、対象をさらに絞ったりする前に、判断が止まった場所を分けます。内容が伝わっていないのか、条件が合わないのか、今は必要がないのか。本人が分かる範囲で話した理由を、決めつけずに扱います。
また、紹介文で広く期待を持たせ、後から大きな制限を伝えると、かえって判断を難しくする可能性があります。主な対応範囲と、確認が必要な場合を見つけやすく示します。相手に自分向けだと思ってもらうことだけが目的ではありません。合わない場合も、その理由を理解して別の方法を選べる説明を目指します。対象人数を減らすことより、適切な判断を助ける具体性を差別化として育てる考え方です。
レイ|反例を置いて、思い込みを削る
絞り込んだ説明を出して問い合わせが減ると、狭すぎたと考えたくなります。ただ、そもそも説明が届いていなかった、時期が変わった、別の商品に関心が移った、といった可能性もあります。反対に、問い合わせが増えても、対応できない仕事ばかりなら、うまく境界を伝えられたとは限りません。数だけから結論を出さず、誰にどこで届き、どんな用事の相談があったかを、確認できる範囲で見ます。
架空の事業で、対象の年数を外した後、営業歴の長い店から相談が来たとします。その一件だけで、広げたことが正解だったとは決めません。何を期待して連絡したのか、提供できる内容と合っていたか、別のきっかけで店を知ったのかを分けます。同時期に紹介や掲載があれば、文章変更だけの効果ではないかもしれません。起きたことと、その理由についての仮説を別に残すことが必要です。
逆に、絞ったことで相談が少なくなっても、必要な案件を無理なく支援できるようになった可能性はあります。その場合も、売上だけでなく、作業の負担、継続して必要とされる場面、他の機会を失う影響を見ます。少ないほどよいとも、多いほどよいとも一律に決められません。自分が続けたい事業の形と、実際に提供できる支援、確認できた需要を合わせて、境界を考える必要があります。
反例を読むときは、相手を理想の顧客ではなかったと片付けないようにします。説明不足、条件の不一致、提供内容の不足など、自分側で直せることが含まれているかもしれません。一方、対応できない範囲を無理に広げる必要もありません。反例から、残す条件、削る条件、追加で確かめる条件を分けます。境界は、自分の正しさを守る線ではなく、提供と選択を合わせ直すための仮説として使います。

