レイ|使う場面と、顧客が進めたいことを確認する
Jobs to Be Doneの考え方は、商品属性だけでなく、顧客がある状況で進めたいことから選択を理解する視点です。D2Cの使用体験へ応用するなら、見た目の好みとともに、その商品をいつ何のために使うかを確かめます。理論が自社のデザインや容器の効果を証明するわけではありません。どの利用場面を観察するかを決める助けとして使います。
購入前の説明では使う人を大きく一つにまとめがちですが、同じ人でも朝と夜、家と外では必要な条件が違うかもしれません。直近の使用をたどり、何をしていた時に手に取り、その前はどうしていたかを聞きます。ブランド側が想定した理想の一日を、顧客の実際の暮らしと同じものとして扱わないことが大切です。語られた範囲から、役立つ場面の候補を作ります。
架空例として、持ち歩ける日用品を買った人を考えます。旅行に使うつもりで買ったのか、家の中で置く場所を変えたいのかでは、サイズへの期待も違います。前者には携帯の条件、後者には取り出しやすさが必要かもしれません。どちらも見た目だけでは分かりません。本人の目的と、商品の正しい使用範囲を照らし、応えられることと応えられないことを明確にします。
この整理で見つかるのは、個別の使用場面についての仮説です。少数の会話から市場全体の需要を推定したり、再購入を保証したりはしません。使われなかった場面も含めて、商品、案内、届け方のどこを見直すかを考えます。顧客の目的を知ることは、すべての希望へ合わせることとは違います。自社が届けたい価値と、実際に役立つ条件の重なりを見つけ、次に試す案を選ぶための視点です。
レイ|ブランドの約束と、届ける活動の整合を見る
Porterの戦略論は、活動の選択や組み合わせ、活動間の整合を考える視点を示します。D2Cへ使うなら、写真、商品、配送、説明、問い合わせが、同じ約束を支えているかを点検できます。ただし、見た目と使い勝手を揃えれば競争優位が成立すると直接示した研究ではありません。本記事では、ブランドの説明と実際に提供する活動の関係を整理するための応用として扱います。
まず、どんな体験を約束しているかを具体的に書きます。「手軽」なら、購入時、開封時、使用時のどこで何を手軽にするのかを分けます。そのために必要な容器の設計、説明、補充や手入れの案内などを並べます。一つの見た目の要素に意味を担わせすぎず、活動が同じ方向を向いているかを確認します。続けるために必要な費用や作業も、価値とは別に把握します。
架空のブランドで、片付けやすさを大切にしながら、開封するたび多くの包装が出る商品を考えます。顧客がその包装をどう受け取るかは確認が必要です。楽しさとして必要な人もいれば、処分の負担と感じる人もいるかもしれません。包装を減らすことを正解とせず、保護や表示の条件も含めて、どの約束をどの活動で支えるかを検討します。
活動を変える際は、得るものと失うものを並べます。見栄え、使う時の便利さ、品質保持、費用などを、すべて無条件で高められるとは限りません。一方、工夫で両立できる部分まで早く諦める必要もありません。顧客の利用場面と自社の提供条件を照らし、試す範囲を選びます。戦略の理論を宣伝の権威にせず、約束が実物と体験に表れているかを問い直すために使います。
レイ|使用体験を「競合と違う点」と「顧客が選ぶ基準」に切り分ける
見た目に惹かれることと、使い続けたいと思うことは区別して観察します。初めて買う時には写真や包装が関わり、使った後には量、保管、手入れなど別の条件が語られるかもしれません。ただし、初回は見た目、再購入は機能と一律には分けません。見た目を毎回楽しむ人も、初回から使う条件を詳しく調べる人もいる可能性があります。段階ごとの理由を確認します。
比較するなら、購入前に期待したこと、開封時に感じたこと、繰り返し使って起きたことを分けます。商品ページのメイン画像の印象だけで判断せず、実物が生活に入った後の動作を記録します。競合の写真と自社の使用者の声を、そのまま同じ条件で比較しないようにします。他商品について分からない使用体験を、弱い点として書き込まず、確認できる特徴と未確認の評価を区別します。
説明用の架空例では、机に置く商品を、色や形で選んだ人がいたとします。使い始めてから、片手で扱えることを喜んだなら、動作が価値の候補になります。しかし、全員が片手で使うとは限らず、実際の性能や安全な使用条件の確認も必要です。初回の好意が続いた部分と、使用後に新しく見つかった良さを分けると、どこを守り、何を伝えるか考えやすくなります。
三十日間の観察は日常の繰り返しを見る一案で、そこで世界観と商品価値が必ず完成するわけではありません。利用周期の長いものは、まだ重要な体験が起きていない可能性があります。使用感がよくても再購入には価格や必要性が関わります。見た目と使用のどちらを重視すべきかを決めつけず、買う人がどの段階で何を必要とし、自社が何を提供できたかを同じ流れで確認します。
レイ|「使用体験」では説明できない反例を先に置く
使用体験を強みと考える時は、それだけでは説明できない例も残します。見た目で買ったが使わなかった、使い心地には満足したが再購入しなかった、気になる点があっても買い続けた。こうした出来事には、目的、価格、購入の周期など別の条件が関わっているかもしれません。都合のよい評価だけを集めず、仮説がどこまで当てはまるかを確かめます。
まず、使わなかったことと、不満があったことを分けます。贈り物として買った、まだ前の商品が残っている、予定した場面がなかったなど、利用の機会が違う可能性があります。再購入がないことも、使い切るまでの期間を見ずに離反と決められません。確認できる行動と、本人に聞いた理由、運営側の推測を分けて記し、分からない部分は空欄のままにします。
架空例として、見た目を気に入って買った容器を、家ではあまり使わなかった人を考えます。聞いてみると、置きたかった棚に収まらなかった可能性があります。この場合、外観が悪いというより、購入前の寸法情報と利用場面の問題かもしれません。逆に、置く条件が合っても手入れが負担だった人も考えられます。どちらも「使用体験が悪い」でまとめず、止まった箇所へ戻します。
反例からは、商品を変える、説明を補う、適した場面を明確にするなど、異なる案が生まれます。使い続けてもらうために、本人の用途に合わない商品を勧める必要はありません。自社の価値が意味を持つ条件と、別の方法が合う条件を説明できることが大切です。反例を添えて主張を弱めるだけで終わらせず、次に何を確かめ、どの案を試すかを具体化する材料として使います。

