レイ|研究でも「強みを持つこと」だけでなく、“使うこと”が別に測られてきた
強み研究では、「どんな強みを持っているか」だけでなく、「それを使っているか」を分けて扱う流れがあります。Woodらの2011年研究は、strengths use(強みを使うこと)についての自己報告尺度を検討し、207人を対象にベースラインと3か月・6か月後を追跡しました。論文では、strengths useがストレス、自尊感情、活力、ポジティブ感情など複数のwell-being指標と縦断的に関連したと報告されています。[1]
BASがここから取り入れるのは、「強みの名前を知る」と「強みを使う」を別の工程として見ることです。診断で“分析力”と出ても、使う場面がなければ生活や仕事は変わりません。逆に、ラベルが分からなくても、実際に「複雑な情報を整理して人に渡す」ことで価値が出ているなら、そこから強み仮説を作れます。使った場面で何が起きたかを、具体的に確かめることが重要です。
ただし、この研究が「強みを使えば誰でも必ず幸福になる」と断定しているわけではありません。サンプルや測定、因果推論には限界があります。本人が使っていると感じることと、客観的に能力や成果が高いことも同じではありません。仕事の結果を見る時は、周囲の支援や、その場の条件も分けて考えます。BASでは研究を背景にしつつ、本人の場面で「使えたか」「結果はどうか」「負荷はどうか」を小さく確かめます。
レイ|仕事は固定された箱ではなく、一部を自分で組み替える“job crafting”という見方がある
「今の仕事に強みが合っているか」を考える時、仕事そのものを固定された箱として見る必要はありません。WrzesniewskiとDuttonは2001年にjob craftingという考えを提案し、従業員が仕事のタスク、関係、認知的な境界を自ら変えることで、仕事の意味やアイデンティティも変わり得るというモデルを示しました。[1]
BASではこれを、「転職するか、このまま耐えるか」の二択を少し細かくする視点として使えます。たとえば整理が得意なら、会議後の要点整理を引き受ける。人の話を聞くのが苦にならないなら、顧客ヒアリングを少し増やす。視覚化が得意なら、説明資料を一枚作る。仕事全体を変えなくても、強み候補を使う場面を小さく増やせる可能性があります。
もちろん、本人が自由に仕事を変えられるとは限りません。権限、安全、契約、チームへの影響があります。変更する範囲を上司や関係者と確かめ、既存の担当や約束を乱さない方法を選びます。試せる小さな範囲があれば、結果と負荷を見て次の使い方を考える。自分や周囲の負担が増えた時は、続けずに戻すことも選択肢です。変更できる範囲がなければ、今している仕事を観察するところからでも構いません。
レイ|“使える強み”は、本人の負荷・相手の価値・状況の3点で見る
BASで強み候補を見る時、三つの点を分けます。第一に、本人にとってどれくらい負荷なくできるか。第二に、相手や事業にどんな価値が出たか。第三に、どんな状況で再現したかです。この三つを分けると、「好きだけどまだ成果が出ない」「成果は出るが非常に消耗する」「特定の相手には強いが別場面では使いにくい」といった違いが見えます。
たとえば「説明が得意」というラベルだけでは曖昧です。「初めての人に、複雑な違いを二つの軸にして説明すると理解が早い」「本人は準備負荷が低い」「接客でも社内でも同じ傾向がある」まで分かれば、使い方が具体になります。逆に、一度だけうまくいったなら、まだ暫定の見立てです。別の場面でも使えそうか、無理なく確かめられるかを考えます。
強みは“人の中に固定的に入っている部品”としてだけ見るより、「どの場面で、どう使うと価値になるか」という関係として見ると実践しやすくなります。BASはラベルを増やすより、使える条件を増やします。たとえば「説明が得意」でも、新規客には強いが専門家同士では伝わりにくい、文章では負荷が低いが口頭では準備が必要、という違いがあります。そこで、自分のメモに相手・形式・時間・責任範囲を残し、どの条件なら価値が出やすいかを比較します。条件が見えるほど、「強みがあるかないか」の二択から、「どう使えば機能するか」という具体的な案を考えやすくなります。
レイ|強みをKGI/KPIにつなぐなら、「何に効かせるか」を具体にする
事業で「自分たちの強みを活かしたい」と言っても、KGI(最終目標の達成を見る指標)やKPI(そこに至る過程を見る指標)との関係が曖昧なままだと行動に変わりません。そこで、強み候補を具体的な役割へ変換します。「比較して整理するのが得意」なら、商品比較ページを作る。「顧客の言葉を拾うのが得意」なら、毎週5件の質問を集める。「場を整えるのが得意」なら、商談前の情報整理を標準化する。こうしたものが、強み候補の使い方の案です。
次に、その案をどのKPIに効かせたいかを明確にします。比較ページなら商品詳細から購入への遷移率、質問収集なら問い合わせ対応時間やコンテンツ供給量などです。ここで「強みがあるからKPIが上がる」とは決めません。強み候補、選んだ案、実際に試したこと、結果を分けて、実際に変化したかを確認します。
結果が動かなければ、強みが間違いとは限りません。使い方、対象、タイミング、KPI設定が違うかもしれません。だから次の案を考える時に見直します。事業に強みをつなぐとは、良い言葉で自己紹介することではなく、具体的な行動に変え、数字や現場で確かめることです。たとえば同じ「顧客理解が得意」でも、ヒアリング数を増やすのか、失注理由を分類するのか、商品説明を直すのかで実際にすることは違います。どの使い方を選び、どのKPIを観察したかを残すことで、結果から次の使い方を考えられます。


WAVE A|SELF
