01
CHRONOLOGY · レイ

資料と使用経験を分けて読む

この問いを整理するには、企業、設計者の原則、読者が使う具体的な物を、同じ証拠として並べないことが大切です。企業の資料は、その企業が何を大切にしてきたと説明するかを示します。設計原則は判断の物差しであり、手元の物の観察は、その物を使う条件の記録です。どれか一つで他を証明することはできません。

本稿の中心資料は、Vitsœが公開するラムスのデザイン原則です。そこにはブラウン製品の図版もありますが、本稿は図版の印象から、利用者全体の使いやすさやブランドへの信頼を推定しません。画像で形を確認できることと、実際の操作を確かめたことには差があります。製品の販売成果についても、ここでは結論を出していません。

一方、読者の仕事へ移すなら、自社の案内、商品の説明、問い合わせの入口を対象にできます。「装飾を減らした」という変更と、「必要な情報を探しやすくした」という変更を分けて記録します。前者は作った側の作業、後者は使う側で確かめる問いです。両者を同じ改善実績として数えないことが、判断の出発点になります。

時系列も分けておくと役立ちます。初めて見た時、初めて使った時、何度か使った後では、必要な案内が違うかもしれません。一度の印象で長期の価値を判断せず、どの時点の話かを添えます。これはBASの整理案であり、観察期間を長くすれば必ず良い結果が出るという意味ではありません。使わない場面や、途中でやめた理由も材料として残せます。

02
HISTORY · レイ

少ない表示にも説明が要る

少ない要素で作られた道具を見ると、説明まで少ない方がよいと考えたくなります。しかし、操作の入口を知っている人と、初めて触る人は同じ条件ではありません。設計者が見せたい静けさと、利用者が今必要としている手がかりが重なるのか。その接点を見ることで、外観の好みだけでは捉えにくい判断が見えてきます。

Vitsœの公開資料で紹介されるラムスの考え方には、理解しやすいこと、過大な約束をしないこと、細部まで配慮することが含まれます。本稿ではその一部を、外観を削る時にも機能の説明責任は残る、という問いへつなぎます。十項目をそのまま自社の採点表に置き換えたものではなく、各原則の全文を転載するものでもありません。

たとえば案内文から専門語を減らす時、予約の条件まで一緒に消していないかを考えられます。短い文章が読みやすくても、対象者、料金に含まれる範囲、次にすることが分からなければ、確認する負担は読者へ移ります。これは架空の企業の成果報告ではなく、公開前の紙面を見比べるためのBASの検討例です。

引き算が適切かは、残った要素と場面の組合せで考えたいところです。慣れた人には不要な説明が、別の人の入口になることもあります。そこで文章を戻す、図を添える、詳しい説明へ進めるなど、複数の方法を比べられます。少なさを守るために困りごとを無視せず、伝える方法を選び直せることが、この原則を使う時の大事な境界です。

03
SYMBOLS · レイ

操作面に表れる識別の手がかり

ロゴや色だけでなく、操作する場所にも識別の手がかりはあります。つまみの形、表示の並び、余白、押した後の反応などです。ただし、それらが似ているだけで同じブランドだと断定したり、特定の意図で作られたと決めたりはできません。まず観察できる配置や動きと、その意味についての解釈を分けます。

本稿のBASの見方では、記号の強さは目立つ量だけでは測れません。使いたい機能と表示が対応していれば、控えめな印でも役割を持ち得ます。一方、見慣れた印でも、その場面で別の意味に読まれるなら説明が必要です。これは使いやすさを保証する法則ではなく、利用者がどこで意味を取り違えるかを見るための問いです。

自社の案内に置き換える場合は、予約、変更、取り消しの入口を見比べられます。同じ形のボタンで統一することと、違う結果になる操作を区別することは、同時に考える必要があります。統一感だけを評価すると、見分けたい違いまで揃えてしまうかもしれません。見た目を変える前に、各要素が何を知らせているかを言葉にします。

比較する条件も添えておきます。初めて使う人か、毎日使う人か。明るい場所か、片手で扱う場面か。同じ紙面を見せても、そこで必要な情報が異なる可能性があります。観察した人や場面が限られていれば、その限界を残します。静かな表現をブランドの個性として育てる時にも、誰の読み取りを支えているかという視点を置けます。

04
REEDITING · レイ

残す情報と削る情報を決める

情報を減らす判断では、何を削るかより先に、利用者が終えたいことを確認します。商品の概要を知る、条件を比較する、申し込む、困った時に戻る。これらを一つの短い画面だけで済ませる必要はありません。最初の入口と、詳しく確かめる場所の役割を分けることで、少なさと説明の深さを両立する案が見えてきます。

たとえば紙の案内を見直すなら、表面には対象と提供内容、別の場所には条件や相談先を置く構成が考えられます。ただし、重要な条件を後からしか読めない位置へ隠す案とは区別します。これはBASによる編集の比較案で、売上や問い合わせ数の改善を確認した実例ではありません。どの条件を先に伝えるかは、依頼の性質から判断します。

改稿前後で比べたいのは、文字数の減少だけではありません。依頼できる範囲が分かるか、次の操作を選べるか、迷った時に確かめ直せるかを見ます。変更した箇所を一つずつ残しておけば、読みやすさと情報の欠落を別に検討できます。反応が変わっても、案内の修正だけが原因と急いで結論づける必要はありません。

仕事の説明を短くしたい時ほど、残す一文に迷うことがあるでしょう。最近直した案内や、何度も聞かれる質問の一つを材料に、自分の場合の入口を考えることもできます。記事末の3人と相談してみるは、その続きを話す任意の場所です。削る結論を先に決めず、誰に何が伝わればよいかから一緒に整理できます。