形と周囲の情報を分けて比べる
輪郭を判断するとき、形と周囲の情報をどう分ければよいでしょうか。D23は、意図されていない形にも来園者がミッキーを見いだした例を記しています。隠れミッキーの解説。これは認知実験ではなく、形と制作意図が一致しない事例の説明です。BASではここから、図形、名前、背景、場所の文脈を分けて比べるという問いを置きます。単純な形ほど認識が速いという結論までは導けません。
例として、ここだけで完結する架空の博物館案内役「ハル」を考えます。細長い尾と三角のかばんを持つ小鳥です。三つの案のうち、Aは輪郭だけ、Bは輪郭と名前、Cは輪郭と展示室の背景を載せます。Bで名前が答えられても、その文字を読んだ可能性が残ります。Cで博物館を連想したとしても、小鳥の形が働いたのか、展示室が働いたのかを一回の比較では分けられません。
この架空の比較では、変更を一つに絞る案が考えられます。尾を短くする案なら、背景や大きさを同時に変えない。画面上の小ささを確かめたいなら、輪郭の形はそろえる。これは厳密な実験ができたと宣言するための手順ではなく、違いの説明候補を減らす工夫です。たとえば尾の変更だけを比べた記録であれば、背景まで変えた場合より、何を判断材料にしたかを後から説明できます。
記録には、対象の名前を答えたか、似ている別の対象を挙げたか、分からなかったかを分けます。反応時間を測るなら、表示時間や端末、先に見た案、元のキャラクターを知っていたかも別に残します。少人数の答えは次に直す箇所の手掛かりにとどめ、全員への効果や一般的な速さへ広げません。結果がはっきりしないときは、形を決める判断を保留する選択もあります。
名前の後に何が思い浮かぶかを確かめる
シルエットの情報を減らすとき、残したいものが名前の識別だけなのか、役割や関係までなのかを先に決めます。BASの見方では、誰かが名前を答えられたという記録と、どんな場面や振る舞いを思い出したかという記録は別です。後者を知りたいのに正解率だけを集めても、必要な答えには届きません。目指している内容を、観察できる問いへ一段ずつ置き換えていきます。
架空のハルを、迷った人と一緒に展示室を探す案内役として設定したとします。輪郭を見せて「この小鳥は、困っている人に何をしそうですか」と尋ねる案を考えられます。ただし、先に設定を読ませれば、その文章の内容を答えている可能性もあります。自然に思い出したことを知りたいときと、説明を読んだ後の理解を知りたいときでは、見せる順番を分ける必要があります。
ここで期待と違う答えが出ても、すぐに受け手の理解不足とは扱いません。「土産を売る鳥」と答えたなら、かばんが販売の道具に見えたのかもしれません。これは架空の説明候補であり、実際の原因はまだ分かりません。かばんを変える、短い案内文を添える、名前だけ伝わればよい場所に用途を限る、と複数の選択肢を残します。変更案を一つに決める前に、何を守るかを選び直します。
この架空の比較を整理すると、「名前」「予想する行動」「思い出した場面」の三つの欄が考えられます。作者の答えだけなら、作者の読みであるという条件が付きます。他の人の回答でも、空欄や複数の答えがあり得ます。役割を思い出せないことを、その人の好意の弱さとして読むことはできません。すべての欄を埋めるより、用途に必要な欄と、今の比較では答えが出ない欄を区別することに意味があります。
残す形を三つの仮置きに分ける
どこまで削るかを相談するとき、BASでは形の要素を「核の候補」「補助の候補」「変えられる候補」に仮置きします。核は残す理由を特に確かめたい部分、補助は状況に応じて識別を助けると考えた部分、変えられる候補は用途ごとに調整したい部分です。これは公式の分類でも、検証済みの尺度でもありません。作者が大切だと思う箇所と、受け手が使う手掛かりの違いを相談するための言葉です。
架空の小鳥ハルなら、細長い尾を核の候補、三角のかばんを補助の候補、かばんの細かな模様を変えられる候補と置けます。ただし、最初の分類は作者の予想です。かばんを消すと別の鳥だと思われ、尾を短くしても同じだと答えられるなら、候補の置き方を見直します。ここでは三つの箱を埋めることより、分類を変えるためにどんな情報が必要かを明らかにすることを優先します。
試案は、元の姿、尾だけ変えた姿、かばんだけ省いた姿のように作れます。一度にすべてを削ると、どの変更を戻せばよいか判断しにくくなります。さらに、輪郭で名前が伝わっても、案内役らしい行動まで伝わるとは限りません。識別の問いと役割の問いを横に置き、どちらに使う試案なのかを記します。あらかじめ比較の目的が残っていれば、想定と異なる答えが出たときにも、どこから判断を見直したかをたどれます。
残すものは、最後には用途と読者を踏まえて選びます。入口の案内表示では名前と場所の対応を重視し、展示の漫画の表紙では人物らしさを残す、と目的が違ってよいのです。すべての場面に共通する最小形を無理に一つ決める必要はありません。今回残す要素と、別の用途では再検討する要素を分けて記録します。分類が役に立たない場合は、元の描写へ戻ることも選択肢に含めます。
小さくする前に表示の仕事を決める
大きな絵を小さなアイコンへ移すときは、何のために表示するのかを決めます。対象の名前を見つけるため、画面の案内役を示すため、作品の雰囲気を添えるためでは、必要な情報が違います。BASが考える移し替えの単位は、単なる画像サイズではなく、その場所で形に任せる仕事です。小さくしても同じ存在が伝わるかという問いを、その仕事を果たせるかという問いと並べます。
架空の博物館アプリで、小鳥ハルの輪郭を検索画面に置く場面を考えます。A案は元の絵をそのまま縮小し、B案は尾と大きなかばんだけを残し、C案は絵を少し大きくして「展示を探す」という説明を添えます。これらは縮小の巧さを競う案ではありません。Aは細部の保持、Bは形の簡略化、Cは言葉との分担という異なる選択です。どれが必要かは、使う人の目的から判断します。
任意の小さな試行として、実際に想定している画面の大きさで三案を見てみます。拡大した制作画面だけで決めず、隣のボタンや背景を置いた状態も確かめます。さらに、顔が見えない案でも案内役の場所が分かるか、絵を押せる操作部品と取り違えないかを別々に記します。自分の見え方だけで全利用者を代表したとせず、確認できなかった条件は次に調べる項目として残します。
B案で名前は伝わっても案内の仕事が伝わらないなら、説明を足す、表示場所を変える、用途を限るなどの選択が残ります。この比較だけで、好感や商品価値まで評価したことにはなりません。たとえば自社のアプリで、小さなキャラクターに何を任せるか迷っているなら、その画面一つが相談の材料になります。BASで相談テーマを選ぶから自分の場合を一緒に考え、形、言葉、置き場所のどこを変えるかを整理することもできます。



