浮いた時間があるかは確認まで含めて見る
案内のたたき台が早くできたら、その時間を作品の見せ方に回せるでしょうか。架空の担当者にとっては魅力的な期待ですが、出力までの速さだけでは判断できません。原稿を整える時間、依頼を入力する時間、事実を照合する時間、読み直しと修正の時間まで含めて、案内の準備にかかる仕事を見ます。AIが文章を出すことは、作業の完了とは別です。
たとえば、展示作品の説明が魅力的でも、実際には用意していない体験企画が加わっていたら、削除と再確認が必要です。文章の調子を合わせる作業が増える場合もあります。確認に慣れた人が代わりに直しているなら、その人の時間も含めます。担当者一人の作業だけが短くなった結果を、サークル全体の負担が減ったと読み替えないようにします。
もし全体の作業時間を減らせたとしても、それが本人の望む活動に回るとは限りません。空いた時間に案内の本数を増やすよう求められれば、作品を見直す余裕は生まれないからです。本人がどの活動に時間を使いたいのかと、周囲が何を期待するのかを相談します。「強みを生かす」という目的を、単に処理する量を増やすことへ置き換えない提案です。
本稿には、実際に時間を測った結果はありません。今後比較するなら、同程度の案内作業について、準備から確認完了までの時間と、修正が必要だった内容を残す案が考えられます。少数回の差を一般的な生産性効果として扱わず、その条件で続けたいかを本人と確かめます。確認負担が大きいなら、AIを使う範囲を狭くするか、採用を見送る判断も残します。
読み方の候補を増やして本人が確かめる
展示会の案内を長い文章で読む方法のほかに、日時、会場、持ち物を分けて読む方法も考えられます。AIへ箇条書きの案を求めるなら、その形が本人にとって確かめやすいかを見ます。文章が短いから誰にでも使いやすい、とは決めません。項目同士の関係が失われたり、例外が離れた場所へ移ったりすれば、かえって意味を追いにくくなる場合があります。
架空の担当者には、元の文章、項目別の案、既存の案内様式という候補を紙で示す案を置きます。どれが正解かを当ててもらうのではなく、開催時刻を見つけられるか、条件の違いがわかるかを本人の使い方に沿って確認します。候補を選ぶ理由から、本人の障害や性格を推定しません。今回の読み方の希望として扱います。
音声、翻訳、画像による説明などを加える案にも、別の確認が必要です。読み上げで固有名詞が伝わるか、翻訳で参加条件が変わっていないかなど、形式ごとに確かめる内容があります。本稿では、それらの機能を実行したり品質を比較したりしていません。AIという名称だけで、必要なアクセス手段がそろっていると判断しないようにします。
AIを使うための操作自体が負担なら、人が説明する、元の紙面を読む、別の道具を使う選択も残します。候補が増えても、利用できるのが一つだけなら、本人が選べる範囲は狭いままです。BASの提案は、AIを必須の入口にせず、その場で使える方法を確かめることです。アクセシビリティの改善は、実際の利用条件を確認するまで、期待と結果を分けて扱います。
断る操作と訂正する場所を用意する
AIが案内文を先回りして短くする仕組みを想像してみます。本人が便利だと思う場合も、表現を残したい場合もあるはずです。Microsoft ResearchのGuidelines for human-AI interaction designは、望まない支援を退けることや誤りを訂正することを設計指針に含めています。本稿では、その考え方を案内作成の操作へ置き換えて検討します。
架空の画面なら、AIの案を元の原稿と分けて表示し、「採用する」「一部を直す」「使わない」を本人が選べる構成が考えられます。ただし、ボタンがあるだけでは十分ではありません。どこが変わったかが見えず、全部を読み直さないと判断できないなら、選ぶ負担が大きくなります。日付や条件の変更を確かめられる表示が必要か、紙上で検討します。
訂正した内容が次の生成で元へ戻ってしまう場合も、考えておきたい問題です。一度直したら永続的に学習するとは前提にせず、修正をどこまで保持するか、次回は何を確かめ直すかを明らかにします。本人が文章を手で直すことも妨げません。採用しなかった案を見せ続けて、何度も断らなければ元の作業に戻れない状態は避ける設計を提案します。
この操作案は実装済み機能の紹介ではありません。実際の製品を使う際には、解除、訂正、取り消しが本当にできるかを確かめる必要があります。AIの提案を選ばないことで作業を続けられなくなるなら、その利用方法は見直します。支援を受けることと決定を委ねることを分け、本人が内容を読んで選ぶ時間を、作業の一部として確保します。
説明を読めたことと技能が身につくこと
AIに「なぜこの順番にしたのか」と尋ねると、文章の構成を考える材料が得られるかもしれません。ただし、もっともらしい理由が返っただけで、正しい説明だとは限りません。NISTのArtificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profileは、生成AIが確信のある形で誤った内容を出すことをリスクとして扱っています。
架空の案内で、AIが「問い合わせ先は省いたほうが読みやすい」と説明したとしても、その理由をそのまま採用する必要はありません。問い合わせ方法が必要な案内なら、目的と照らして退けます。理由を返してもらうことは、人が検討する材料を増やす可能性がありますが、説明の正しさを確認する作業も増やします。答えに説明が付いていることを、検証済みの印としません。
担当者が文章の構成を練習したい場合は、自分の案と別の案を並べ、何を残すかを考える方法が候補になります。一方、今回は早く案内を整えたいだけなら、学習課題まで追加する必要はありません。支援を利用するたびに成長を示す義務を置かず、その回の本人の目的を聞きます。練習のために必要な道具を外すことも、一律には求めません。
本稿では、AIを使って技能が伸びたとも、使わないことで技能が保たれたとも結論づけません。説明を理解した感覚、一度作業を終えたこと、次の場面で自分で使えることは別に確かめる必要があります。BASの提案は、本人が望む場合に比較や振り返りの機会を残すところまでです。教育効果や技能形成の方法として検証したものではありません。



