01
CHRONOLOGY · レイ

レイ|創造性研究では「問題を見つけ、定義する」こと自体が一つの工程

「答えを出す前に何を集めるか」という考えは、BASだけの言い回しではありません。創造性研究では、problem finding(問題発見・問題形成)がproblem solving(問題解決)とは区別されてきました。RuncoとNemiroのレビューは、problem findingを単一の技術ではなく、問題の同定、定義、表現、構成などを含む関連技能のまとまりとして整理しています。[1]

ここで重要なのは、「問題が見つかれば自動的に良いアイデアが出る」という話ではないことです。何を問題として扱うか、どんな境界を引くかによって、その後に考えられる選択肢が変わるという点です。「売上が下がった」だけを問題にするのか、「どの顧客の、どの購入段階で変化したか」まで分けるのかで、必要な材料は違います。BASの記事では、問題の捉え方を見直すために、どんな材料が足りないかを考えます。

研究上のproblem findingと、BASがいう「考える材料」は同じ概念ではありません。この記事では、自分で考える手がかりとして、出来事・質問・制約・数字・比較・過去経験などを分けて扱います。そのうえで、「何を問題として見直すか」「どんな問いなら考えられそうか」を本人の言葉で考え直します。これはBAS独自の整理です。外部研究は、その順序や効果を直接証明するものではなく、答えを出すだけでなく問題そのものを捉え直すことも論点になる、という背景を示しています。

実務では、問題名を早く付けるより、「誰の、どの場面で、何が止まったか」を一文にする方が次の行動を選びやすくなります。その一文を仮置きし、追加の材料で書き換える前提にすれば、結論を急いでいないか、必要以上に判断を先送りしていないかを見直す手がかりになります。

02
COMPANY · レイ

レイ|問題の“枠”は固定ではない。集めた材料で、何度も描き直せる

2025年のJournal of Product Innovation Managementの統合レビューは、problem framingを「最初に一度決めて終わる工程」としてではなく、複数の要素が時間の中で動く創造的プロセスとして整理しています。レビュー対象は188本で、問題表現、活性化された知識、注意や見方に働きかける刺激、創造的な論理という四つの構成要素を統合しています。[1]

BASに引き寄せると、最初に聞いた悩みをそのまま最終的な問題名に固定しない、ということです。「SNSのネタがない」と来ても、材料を集めた結果、「ネタ不足」より「誰の何を解決する発信か決まっていない」が大きいかもしれません。「強みがない」と来ても、「得意がない」より「使う場面と相手が見えていない」可能性があります。材料が増えるたびに、問題の枠そのものを描き直せます。

これは、一つの結論へ急いで固定しない理由でもあります。早い段階で結論を固定すると、新しい材料が入っても古い問いに押し込めてしまいます。逆に、問題の枠を何度か描き直せるようにすると、「いま何を確認するか」「何を試すか」が変わります。研究のproblem framingをBASの設計そのものと同一視はしませんが、「問題の定義は反復的に変わり得る」という知見は、材料・気づき・案の間を行き来して考える、BAS独自の整理にも参考になります。

会議や企画で意見が割れた時は、答えを競う前に、それぞれが前提にしている問題の枠を書き出します。同じ事実を見ていても問いが違うと分かれば、次に集める材料や試す順番を具体的に変えられます。

VERIFICATION
As Of
2026.09.30
Last Verified At
2026.09.30
Source Name
Magistretti, Pham & Dell'Era (2025), The creative process of problem framing for innovation
03
PRODUCTS · レイ

レイ|MATERIALは「情報の倉庫」ではなく、次の問いを作るための作業台

情報を集めると、整理しただけで進んだ気持ちになることがあります。この記事でいうMATERIALは、考えるために集めた材料です。集める目的は、資料庫を大きくすることではありません。材料を並べた時に「何が共通している?」「どこが違う?」「何がまだ確認できていない?」「もし一つ変えるならどこ?」と、次の問いが生まれることが重要です。材料を並べる場所を、思考の作業台として使います。

たとえば、接客について「質問Aが多い」「返品理由Bがある」「ベテランだけ説明時間が短い」「価格表は全員同じ」という四つの材料があったとします。ここからすぐ「説明資料を作る」と決めるのではなく、「質問Aはどの顧客に多い?」「ベテランは何を先に聞いている?」「返品理由Bは購入前に防げる?」と問いを作ります。自分で立てた問いを書いておけば、後から「なぜその案を考えたのか」を振り返る手がかりになります。

自分でメモする時も、観察したことと、そこから考えた案を分けると振り返りやすくなります。「質問Aが3回あった」は材料。「初回説明を用途別に分けてみよう」は案。「まず1週間だけ用途を最初に聞く」は小さな試し方です。種類を分ければ、うまくいかなかった時に「アイデアが悪かったのか、材料の読み方が違ったのか、実行方法が違ったのか」を戻って考えられます。

作業台として使うなら、材料・仮説・小さな試行・結果を別の列に置きます。結果が期待と違っても、どの読みや行動を直せばよいか戻れるため、失敗を曖昧な自己評価にせず次の判断材料へ変えられます。

04
MARKET · レイ

レイ|集め過ぎを防ぐために「何が分かれば次に進めるか」を先に置く

「もっと情報があれば決められる」は、時々本当です。でも、何が分かれば決められるのかが曖昧なままだと、検索だけが増えます。この記事では、考える材料が足りないと感じた時に、「次に何を決めたいのか」を先に一行で置きます。新商品を出すかではなく、「誰向けの仮説を一つ試すか」。転職するかではなく、「今の仕事で苦にならず価値が出ている行動を確認するか」。決定単位を小さくすると、必要な材料も絞れます。

事業なら、KGI(最終目標の達成を見る指標)とKPI(そこに至る過程を見る指標)を分けることも手がかりになります。売上KGIに対して「来店数が落ちている」のか「来店後の購入率が落ちている」のかで、集める材料は違います。個人なら、「やりたいことを一生分決める」のではなく、「来週もう一度やってみたい行動を選ぶ」なら、必要な材料はもっと少なくて済みます。大きな問いをそのまま解こうとすると、情報収集も終わりません。

この考え方の目的は、早く決めさせることではありません。必要な確認を飛ばさず、それでも「全部わからないと動けない」にしないためです。次の小さな判断に必要な材料を集める。案が出たら、確かめたいことと無理なく試せる範囲を選ぶ。試した結果を、新しい材料として見直す。こうすれば、最初の情報が不完全でも、試行から解像度を上げられます。

次の打ち合わせや一人で考える時間では、「次に決めること」と「そのために不足している一つ」を先に書くと、集め過ぎを防げます。自分の場面では何を止め、何を確かめるべきか整理したい時は、その判断を3人と一緒に組み立てることもできます。

VERIFICATION
As Of
2026.09.30
Last Verified At
2026.09.30
Source Name
BAS MATERIAL GAP model